

第五話 高層ホテル
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遠山里美の受難 第五回 『母さん,元気ですか?
いつも心配かけてごめんなさい。里美は元気です。 遠山里美はホテル備え付けの真っ白で右端に金字でペニンシュラのロゴの入った便せんにペンを走らせた。 ツインベッドの片方でジャケットも脱がず眠っているのは同僚のヤスコではなく,彼女の配属されるところの主任である里見安雄である。 誰にもいえない愛の蜜月旅行だ。 部屋からの眺めは百万ドルの夜景というには若干寂しいものだった。 でもここは東京や横浜とあまり変わらないわ。 里美は寝ている安雄を無理に起こして最上階のラウンジ,クラブ「福禄寿」に行った。 里美もユウウツになった。 部屋に戻るときチェックカウンタで安雄が領収書をくれ,とボーイにいいつけるのを聞いた里美はふいに怒りがこみ上げてきた。 これはランデブーなのよ! 部屋のドアを開けようとしている安雄の背中に向かって里美は グノシェンヌ第3番/モーガン・フィッシャー 振り向いた安雄は一瞬泣きそうに見えた。 私たちにはなにかきっかけが必要なの。この生煮え状態はたまらない。 里美は香港の旅を楽しんだ。 第五回 遠山里美の受難(つづく) |

