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ごぶさたしました。遠山里美の近況。
遠山里美29才は実家の郡山から送られた3つの段ボールを次々にあけた。
箱の中身は全て冬服である。収納の少ない里美のマンションでは衣類の置場所が一番の難点だ。
苦肉の策として春になれば冬服を,秋になれば夏服を実家に送るわけである。
季節ごとに送り返される服と服との間には,ときどき父母と同居している祖母が,ちょっとした心遣いをはさんでくれる。
茶封筒に達筆で「遠山里美賛江 お小遣い」と書いてある。
先週からおばあちゃんは持病のリュウマチがひどくなり入院してしまったので今回のお小遣いは期待できない。
二つ目の箱の一番上にはシャネルのシャーベットピンクのケープが入っている。
先月リボ払いがやっとすみ,晴れて自分のものになったと実感した。
今期はパステルって気分じゃないわね,と思いつつも胸に燦然と輝く勲章よりも晴れやかなシャネルのボタンは,巷のシャネラーを威圧するのに十分だ。
なんちゃってシャネルのコギャルどもに憎悪の炎を燃やす里美であった。
この春,勤続3年目にして,女子社員代表でメルボルン本社に3週間の研修旅行に行った。そのとき里美は本社の若手エリートから大いにもてた。
彼氏いない歴3年の里美は自信を取り戻す。
そしてこの秋里美は髪を思い切ってブロンドに染めた。
秋の行楽シーズン,クリスマス,正月と恋人たちのアルバムをにぎわす季節はまた,恋人のいない女たちにとって心寒い季節だ。
この季節,里美は,それを覆すように派手になる。
冬の寒空の下,冷えた体を温めるのは,男の腕ではなく,シャネルのケープなのだ。
今年の冬も,ワタシは孤高のシャネラーなのだわ。
今はもう,「今年こそ」という気持ちはない。
ガツガツせずに成り行き任せだ。
でもちょっぴり寂しい。
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